ハブサクセン史上最高の実戦密着度だった
今夏の相模補給廠でのパイプライン演習

「HABU-SAKUSEN」という名前の年次演習がある。米陸軍の予備部隊のうち、石油パイプラ インを担当する部隊が、毎年米本土から沖縄にやってきて、ホワイトビーチや金武湾から 嘉手納AP、普天間APに延びるパイプラインやターミナルを使った訓練を行う。ハブは言う までもなく沖縄に生息する毒蛇。米軍はニックネームによく「強い動物」の名前をつける 。コブラだったりトラだったり、中にはデーモン、デビルなんてのもある。ハブ作戦もそ んなところから名付けられたのだろう。実際に訓練で使えるパイプラインが沖縄にしかな い、ということで、10年以上前から沖縄の陸軍第505品質管理大隊がホスト役を勤め て毎夏行われている。

 今年の「ハブサクセン2002」は神奈川県中部の相模補給廠で7月8日から8月31 日まで行われた。なぜ、今年に限って相模補給廠で行われたのだろうか。
 相模補給廠には内陸部石油配送システム(IPDS)と呼ばれる移動式のパイプライン のセットが2つ、保管されている。この保管状態の点検をするために今年のハブサクセン は企画された。IPDSは95年2月に最初のセットの相模補給廠への搬入が始まった。 95年10月に発行された米陸軍の一般向け年次報告「グリーンブック」の中で、このI PDSについて次のような記述がある。
「米陸軍資材コマンドは、極東での "陸軍戦時備蓄4(AWR−4)" の充足率を高めつ つある。最近の動きでは、韓国で使用するために、相模補給廠に内陸部石油配送システム を運び込んだ」

 この在韓米軍向けのセットを使って、予備部隊のパイプライン演習が相模補給廠で行わ れたのだ。詳しい内容は、在日米陸軍の基地内紙「TORII」2002.9.6の記事(翻訳版)を見てほしい。その中で演習責任者の一人がこう言っている。
「われわれは沖縄で重要な訓練を行ってきた。しかし、IPDSを使う訓練は出来なかった。IPDSは戦時備蓄の一部として相模補給廠に保管されている。本来の(石油供給担当予備)部隊の任務は、IPDSを取り扱うことなのだが」「今回の演習で、部隊は企画段階からパイプラインの組み立て、実地訓練、分解の各フェーズを経験した」

 「本来の(石油供給担当予備)部隊の任務」で想定される戦場はどこだろうか。ハブサクセン演習に動員された予備軍の兵士たちは、 イラクに行くのかもしれない。相模補給廠のパイプラインセットも場合によっては運び出 されるかもしれない。しかし、この補給廠の備蓄品は本来朝鮮半島有事の際に使われるこ とを前提にしたものだ。陸軍野戦支援軍の "陸軍事前備蓄4(APS−4、AWR−4か ら名称変更)" のページでは「韓国、日本、ハワイのAPS−4は、太平洋戦域を支援す る。大規模な修理・備蓄機能は、韓国のキャンプ・キャロルと日本の相模補給廠にある」 とはっきりと書かれている。
 余談だが、今横浜ノースドックに運び込まれている陸軍の船艇のセットもAPS−4に 組み込まれていくのだろう。

 在日米軍基地の中で、戦争遂行になくてはならない燃料の輸送訓練が、極めて実戦的な 形で行われたのだ。「平和憲法下の日本」は安保体制によって実は戦場に直結しているの だ。

参考サイト

石油配給システム点検訓練の後半が始まった相模補給廠(金子ときお)

補給廠で石油配給システムの点検訓練(金子ときお)

TORII 2002.9.6 のトップページここから"Habu Sakusen 2002"全文にリンクしている

Operating the Only Active Army Pipeline - Annual Exercise Realistic for Reservists 沖縄での「ハブサクセン」の内容がよくわかる Army Prepositioned Stocks (APS)-4


'2002-9-22|HOME|