増加する情報収集艦の寄港

2009年以降、情報収集を任務とする音響測定艦、測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦の中では音響測定艦の寄港回数が突出している。2006年から始まった音響測定艦の 寄港は2010年(39回)をピークに、16年も過去5番目の寄港回数(27回)となった。

音響測定艦は潜水艦を捜索・追尾することを任務としており、中国や北朝鮮の潜水艦を主要な捜索の対象にしていることを示すように、米海軍が運用する5隻の音響測定艦のすべてが 西太平洋に展開している。特に中国海軍(人民解放軍海軍)の潜水艦については行動範囲がグアム周辺の西太平洋にまで広がり、さらに静粛性も向上しているところから、重点的に調査 している様子がうかがわれる。

この状況はこの数年変わらないようで、佐世保を中心に任務に当たっているようだ。乗組員の休養や艦の維持作業のため停泊期間が長期化する傾向にあり、活動の拠点化を示すように 2隻あるいは3隻が同時に停泊するケースも増え、停泊日数が延べ429日となっている。

2006年までは佐世保にほとんど寄港することがなかった音響測定艦が2010米会計年度以降に増加した背景には、外洋の深海から大陸沿岸の水深が比較的浅い海域を任務海域にす るという米海軍の潜水艦の運用の変更と合わせ、中国海軍の急速な海洋進出と関係があると思われる。

情報収集艦は西太平洋補給運用司令部(COMLOGWESTPAC 事務所はシンガポール)の指揮下にあり、南シナ海および東シナ海、フィリピン海、日本海で任務にあたっているようで、佐世保 や沖縄への寄港は休養や補給、連絡のためだろう。

音響測定艦は佐世保以外では沖縄・ホワイトビーチに合計12回寄港している。
また、2014年から前任のオブザベーション・アイランドと交代した弾道ミサイル観測艦ハワード・O・ローレンセンは8回寄港した。一回の停泊期間は依然と大きな変化がなく、 周辺での弾道ミサイル発射情報や自国の訓練に合わせて移動するという運用方法は変わっていないようだ。


一方、海底の地形や潮流などを調査する測量艦の寄港は2001年以降増減を繰り返していたが、2016年は9回と、変わらなかった。ただ、2009年にも7回と減少したが、 翌年には22回と急増しており、寄港回数の減少が活動の低下を示すものかどうかは不明。

また、情報収集艦はたびたび東シナ海や南シナ海で中国の艦船とトラブルを起こしており、そのたびに横須賀に配備されている駆逐艦が駆け付けるという、緊張した状況が続いている。

米海軍が運用する測量艦(6隻)のうち15年に続き16年も3隻が佐世保に寄港した。佐世保以外では横須賀、横浜、沖縄への入港記録はなく、佐世保が事実上の拠点となっている。
この数年、寄港回数は増減を繰り返しているが、1寄港当たりの停泊日数は15年のほぼ半分となり変化の兆しがある。




音響測定艦と測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦など情報収集艦船の入港回数は、母港艦を除いた艦船の入港回数の29・3%(前年は21・3)%となった。


(RIMPEACE編集委員・佐世保)


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