米海軍佐世保基地の動き=2011年= はじめに


 3月11日に起きた東日本大震災と東京電力福島第1発電所の原子炉事故は、日本本土最西端の佐世保にも大きな影響を与えた。

それは何よりも、福島第1原発による首都圏の米軍基地からの退避と首都圏に滞在する米国人の避難作戦によるものが大きかった。3月17日に発動された「非戦闘員退避作戦(NCEO)」に先立ちまず横須賀に配備されている駆逐艦などの戦闘艦が21日までにすべて出港し、厚木基地の航空機もグアムへと飛び去っていた。定期修理中だった原子力空母ジョージ・ワシントンも横須賀を21日出港し、洋上でメンテナンス作業を行いながら機材の補給や作業員の交代のため佐世保に寄港したが、「丸腰」の原子力空母が佐世保に寄港したことは前例がない。それほど異常な事態だったのだ。
また、横須賀にある第7艦隊の司令部機能を放射能の影響が少ない日本最先端の佐世保に移転することも慎重に検討されていたという。佐世保基地では司令部機能の受け入れと避難民の輸送で緊張した日が続いていた。

東日本での米軍の救援作戦では佐世保基地が補給作戦の拠点となったため、貨物弾薬補給艦を中心とした各種補給艦の寄港が相次いだ。
米海軍の補給艦では食料や被服・備品などを補給する戦闘補給艦(T-AFS)と砲弾やミサイルなど各種兵器を補給する弾薬補給艦(T-AE)の機能を併せ持った新型の貨物弾薬補給艦(T-AKE)にすべて交代した結果、補給艦の入港回数は前年と同じだったが実質的には増加したと捉えるべきだろう。

駆逐艦などの洋上戦闘艦では、福島第1原発事故の放射能汚染から避難した艦船が佐世保に集まったことから入港回数、停泊日数とも大きく増加した
。  福島での原発事故は、原子力空母ジョージ・ワシントンと第7艦隊の旗艦ブルーリッジが配備されている横須賀のバックアップ機能も佐世保基地に求められていることが明らかになった。

 一方、東日本救援作戦にもかかわらず佐世保基地に配備されている揚陸艦隊はほぼ例年と同じように沖縄に駐留する海兵隊を乗せて、アジア各地での訓練に出かけた。

2011年で最も寄港回数が多かったのは昨年に続き音響測定艦で、これに伴い停泊日数も延べ400日を越え、運用の拠点が佐世保に移転したようだ。

(RIMPEACE編集委員・佐世保)




佐世保母港艦船の動き
定着した音響測定艦と測量艦
空母艦隊や揚陸艦隊とリンクした補給艦
戦闘・作戦艦の動き
2011年入港艦船一覧


2012-1-26