米海軍佐世保基地の動き=2012年= はじめに


米海軍の予算削減は極東にある佐世保基地(CFAS)に配備されている艦船の活動にも影響を与えている。
強襲揚陸艦エセックスは2000年7月に交代配備されて以降11年間、本来ならば受けるべき定期の大規模メンテナンス作業(EDSRA)や艦体寿命延長(SLE)工事を受けないまま今日 に至っていた。その結果、2012年6月に故障したのを始め、数回にわたって不具合などにより作戦行動を中断せざるを得なかった。3月30日には米韓合同訓練「フォール・イーグル」に 参加している途中、駆逐艦チェイフィにエスコートされながらヘリコプターなどを満載したまま一時的に帰港した。
故障の誘因が「予算不足のためメンテナンス作業を十分出来なかったため」と米海軍は星条旗新聞の取材に対して認めていた。

4月にはエセックスと交代に同型のボノム・リシャールが配備されたが、同艦は新型の垂直離発着輸送機MV22オスプレーを搭載・運用する認証を2011年6月末までに終了していた。
ボノム・リシャールは配備後、5月から東・東南アジアでの作戦航海に出かけた。

各種補給艦の動きでは、2011年は東日本での米軍の救援作戦で佐世保基地が補給作戦の拠点となったため、貨物弾薬補給艦を中心とした各種補給艦の寄港が相次いだが、2012年は空母が 寄港しなかったこともあり減少した。
補給艦の中で特に減少したのは空母戦闘群に随伴している戦闘補給艦(AOE)で前年の6回から0回に、燃料補給艦(AO)は若干減少し2010年と同水準の 25回となった。食糧や備品などを補給する戦闘補給艦(AFS)と砲弾やミサイルなど各種兵器を補給する弾薬補給艦(AE)はすべて退役し、両タイプの機能を併せ持った新型の貨物弾薬補給艦 (AKE)にすべて交代した。

音響想定艦、測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦といった情報収集艦では音響測定艦の集中寄港が目立っており、2010年以降30回以上の寄港が続き、また1寄港当たりの平均停泊日数 は2週間を超える(14.9日)ようになった。しかし、音響調査用のケーブルなど装備品の備蓄が確認されていないため、事実上の「母港」なのかどうかは断定できない。

測量艦の寄港は2001年以降増減を繰り返しており、周辺海域の調査が一段落したためか、この数年は減少傾向にある。また、弾道ミサイル観測艦は新型の建造が進められているが、西太平洋 地域で弾道ミサイル発射の情報があるときには今後も補給や情報伝達などのため入港を繰り返すものと思われる。(グラフ【年間寄港回数の推移】参照)

(RIMPEACE編集委員・佐世保)



佐世保母港艦船の動き
拠点化した音響測定艦と測量艦
更新が進んだ補給艦
戦闘・作戦艦の動き
2012年入港艦船一覧


2013-1-31