拠点化した音響測定艦と測量艦

音響想定艦、測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦といった情報収集艦では音響測定艦の集中寄港が目立っており、2010年以降30回以上の寄港が続き、また1寄港当たりの平均停泊日数 は2週間を超える(14.9日)ようになった。

潜水艦を追尾する音響測定艦は2009米会計年度までは佐世保に寄港することはまれで、 西太平洋運用司令部(COMLOGWESTPAC)があった横浜(現在はシンガポールに移転)および東シナ海 など作戦海域に近い沖縄(那覇軍港、ホワイトビーチ)への寄港が大半であった。
寄港回数を見ると、横浜へは2008米会計年度の32隻から2010米会計年度には4隻へ、さらに2011年度には0隻、2012年度は1隻へ減少し、代わりに佐世保には2008会計年度 に3隻であったものが2011年度には34隻に、沖縄(那覇軍港、ホワイトビーチ)への寄港は2011年9隻、2012年は10隻へと変化している。
音響測定艦の任務海域が東シナ海や南シナ海にほぼ限定され、その運用拠点が佐世保に変わったと思われる。ただし、音響測定艦の「心臓部」である音響ソナーや曳航ケーブルの備蓄などは確認 されていない。また、小規模のメンテナンス作業は行っているものの、佐世保のドライドックで長期間のメンテナンス作業を行うなどの維持・補修作業は行っていないところから、これまで同様に 運用上の拠点にとどまっているものと思われる。
しかし、米海軍が運用する音響測定艦すべて(5隻)が寄港し平均停泊日数も増加しているところから、佐世保が事実上の配備場所となっていると思われる。


測量艦の寄港は2001年以降増減を繰り返しており、周辺海域の調査が一段落したためか、この数年は減少傾向にある。海底の地形や海流などを調査する測量艦は2001年頃から寄港が増加 し、2010年には米海軍が運用する測量艦(7隻)のうち5隻が佐世保に寄港し、2012年も6隻中4隻が寄港するという集中ぶり。 だが、この数年で見ると寄港回数も停泊日数も減少している。
測量艦の活動海域は東シナ海や南シナ海、日本海などユーラシア大陸の沿海海域が中心と思われ、これまでも中国の艦船とトラブルを起している。


弾道ミサイル観測艦は新型の建造が進められているが、西太平洋地域で弾道ミサイル発射の情報があるときには今後も補給や情報伝達などのため入港を繰り返すものと思われる。日本国内では 佐世保のほか横浜と横須賀に寄港しているが、寄港回数では佐世保が多くなっている(横浜4回、横須賀1回)。
一方、どのような理由によるかは不明だが、沖縄・那覇軍港への寄港は確認されなかった。


音響測定艦と測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦など情報収集艦船の合計で見ると、すべての艦船の入港回数(母港艦を除く)の30.7(前年は29.8)%、補助・補給艦船に限定すれ ば入港回数の35.8(前年は34.1)%を占めている。


(RIMPEACE編集委員・佐世保)


はじめに
佐世保母港艦船の動き
更新が進んだ補給艦
戦闘・作戦艦の動き
2012年入港艦船一覧


2013-1-31