拠点化した音響測定艦と測量艦

音響想定艦、測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦といった情報収集艦では音響測定艦の集中寄港が目立っており、2010年以降30回以上の寄港が続き、昨2013年は21回に減少した が、1寄港当たりの平均停泊日数は過去最高の19・4日となった。

潜水艦を追尾する音響測定艦は2009米会計年度までは佐世保に寄港することはまれで、 西太平洋補給運用司令部(COMLOGWESTPAC)があった横浜(現在はシンガポールに移転)および東シナ海 など作戦海域に近い沖縄(那覇軍港、ホワイトビーチ)への寄港が大半であった。
しかし近年は佐世保へ寄港が集中し、2013年の情報収集艦の佐世保以外への寄港は那覇軍港に合計7回、ホワイトビーチに7回、横浜に4回、合計停泊日数112日となり、佐世保の寄港回数 合計47回 合計停泊日数621日と比較すると際立っている。

音響測定艦の任務海域が東シナ海や南シナ海、日本海にほぼ限定され、休養や補給、情報伝達などの運用拠点が佐世保となっている。ただし、音響測定艦の「心臓部」である音響ソナーや曳航ケー ブルの備蓄などは依然、確認されていない。
また、小規模のメンテナンス作業は行っているものの、佐世保のドライドックで長期間のメンテナンス作業を行うなどの維持・補修作業は行っていないが、事実上の拠点として位置づけられている ものと思われる。

音響測定艦が潜水艦探知用に使用しているLFA(低周波)ソナーは海洋ほ乳類の生態系に悪影響を与えるとされ、米本土周辺海域では使用が中止されているようで、その関係もあって米海軍が運用 する音響測定艦すべて(5隻)が東アジアに集中配備されているようだ。
佐世保周辺の海域で時折イルカの異常行動が報告されているが、音響測定艦の運用と関係しているものと思われる。(グラフ【音響測定艦】参照)


一方、海底の地形や潮流などを調査する測量艦の寄港は2001年以降増減を繰り返しており、2013年は19回とその前の年より増加した。

測量艦は2001年頃から寄港が増加し、2010年には米海軍が運用する測量艦(7隻)のうち5隻が佐世保に寄港していたが、2013年も6隻中3隻が寄港した。佐世保以外には横浜に 3回寄港しただけで、佐世保への集中が目立っている。
このほか測量艦ボウデイッチはフィリピンでの台風被害援助に加わっていたが、日本への寄港はなかった。

この数年、寄港回数は増減を繰り返しているが、1寄港当たりの停泊日数は減少してきている。
測量艦の活動海域は東シナ海や南シナ海、日本海などユーラシア大陸の沿海海域が中心と思われ、これまでも中国の艦船とトラブルを起している。(グラフ【測量艦】参照)


また、弾道ミサイル観測艦は新型のハワード・O・ローレンセンの建造が進められ、2014会計年度中にも交代する可能性がある。交代配備後も西太平洋地域で弾道ミサイル発射の情報があると きには補給や情報伝達などのため入港を繰り返すものと思われる。
日本国内では佐世保のほか横浜と那覇軍港にそれぞれ1回に寄港した。(グラフ【情報収集艦】参照)


音響測定艦と測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦など情報収集艦船の合計で見ると、すべての艦船の入港回数(母港艦を除く)の31・0(前年は30・7)%、補助・補給艦船に限定すれ ば入港回数の45・2(前年は35・8)%を占めている。(グラフ【艦種別寄港割合】参照)


(RIMPEACE編集委員・佐世保)


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2013年入港艦船一覧


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