米海軍佐世保基地の動き=2014年= はじめに


米国の新しいアジア戦略「再均衡(REBALANCE)」政策は、引き続く米海軍の予算削減により米海軍佐世保基地(CFAS)に配備されている艦船の活動に微妙な影響を与えている。

2008年にジュノーと交代に配備されたドック型輸送揚陸艦デンバーは将来艦隊計画により7月に佐世保を離れ、その後退役した。しかし、後継艦として予定されていたグリーン・ベイは予算の 都合で配備が延期され、2014米会計年度末(2014年9月)における佐世保基地配備艦船は各種揚陸艦3隻、掃海艦4隻体制となった。
グリーン・ベイが配備されるまでの空白を埋めるため、退役間近だった強襲揚陸艦ペリリューが臨時に派遣されたが、そのペリリューも年末には退役準備のため米本土・カリフォルニア州サンディ エゴ海軍基地に戻った。ペリリューはその後ハワイ州パールハーバー海軍基地で予備艦隊に編入される。

一方、佐世保に配備計画が表明された新型の沿海戦闘艦(LCS)は、調達計画が米国議会で大きく削減された影響で配備のスケジュールは明確ではない。沿海戦闘艦と交代して撤退するとみられて いた掃海艦は当分、配備が継続されることとなり、退役が決まっていたアベンジャーとディフェンダーは7月に佐世保を離れ、交代にパイオニアとチーフが配備された。
貨物船に乗って米本土に戻ったアベンジャーとディフェンダーは、9月末にサンディエゴ海軍基地で退役セレモニーが行われた。
米国議会調査局(CRS)のレポートによれば、すでに配備されている4隻に加え2010会計年度から2015会計年度までに調達あるいは調達計画中の沿海戦闘艦は20隻になるが、その後の調達 については不透明になっているため、佐世保配備は未定と思われる。

強襲揚陸艦ボノム・リシャールは3月27日から4月7日まで韓国で行われた「双竜(SSANG YONG)」訓練にドック型輸送揚陸艦デンバー、ドック型揚陸艦アシュランドとともに参加した。
この訓練には強襲揚陸艦ボクサーを主力としたESG(遠征攻撃群)も参加しており、韓国軍との統合指揮を実践するなど、北東アジア最大の訓練となった。

佐世保に昨年入港した米海軍の隻数は延べ206隻となり、昨年より若干増加したが、これは掃海艦の交代に伴うトレーニングの増加によるものと思われる。
主要なところでは、原潜は4隻が延べ9回寄港した。原潜の寄港回数は佐世保に限ってみれば3年連続で減少している。在日米海軍基地全体でみれば、沖縄・ホワイトビーチ基地の桟橋に2012年 に艦船係留支援設備(通称、コールド・アイアン)が設置された関係で一時的に寄港回数が増加したが、それを除けばこの数年、増減はほとんどない。
原潜の日本寄港回数はは周辺の情勢とは連動していないようだ。
また、原子力空母ジョージ・ワシントンが8月に入港したが、東京電力福島第一発電所の事故から避難してきた2011年4月以来となる今回は、初めて飛行甲板に航空機を搭載した作戦状態での 寄港となった。護衛の巡洋艦1隻と駆逐艦2隻も前後して入港したが、空母が横須賀に配備されているため随伴する戦闘補給艦はいなかった。

洋上補給艦(AO,AKE,AOE)は、旧型の弾薬補給艦(AE)と戦闘給糧艦(AFS)に代わって貨物弾薬補給艦(AKE)が展開した以降では最多となる66隻が入港した。特に多かったのが貨物弾薬補給艦 で、54回を数えた。

音響想定艦、測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦といった情報収集艦では音響測定艦の1寄港当たりの平均停泊日数は20日、測量(海洋調査)艦の寄港回数は大きく減少したが、平均停泊 日数は10日(13年は7日)と逆に伸びた。また、弾道ミサイル観測艦は新型艦が配備され、補給や情報伝達などのため入港を繰り返した。

2009年12月に隣接する平瀬係船池に大型の岸壁が完成し運用が開始されて以降、現在は強襲揚陸艦ボノム・リシャールとドック型揚陸艦が停泊している。余裕ができた立神岸壁には洋上補給 艦や音響測定艦、測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦などの情報収集艦の停泊が増加した。

(RIMPEACE編集委員・佐世保)



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