米海軍佐世保基地の動き=2015年= はじめに


米国の新しい安全保障戦略「再均衡(REBALANCE)」政策に基づく米海軍の艦船建造計画(Shipbuilding Plans)が2015年11月に更新されたが、本体の海軍関係予算の削減により米海軍佐世保基地(CFAS)に配備されている艦船の活動や訓練に微妙な影響を与えている。

現役では最古の揚陸艦となったドック型輸送揚陸艦デンバーは将来艦隊計画により2014年7月に佐世保を離れたが、後継艦として予定されていた新型のグリーンベイは予算の都合で配備が延期され、佐世保に配備されたのは2015年の3月だった。このためグリーンベイが配備されるまでの空白を埋めるため、退役間近だった強襲揚陸艦ペリリューが臨時に派遣されたが、そのペリリューもグリーンベイを待つことなく退役準備のため米本土・カリフォルニア州サンディエゴ海軍基地に戻った。

一方、佐世保に配備計画が表明された新型の沿海戦闘艦(LCS)は、調達計画が米国議会で大きく削減された影響で配備のスケジュールは明確ではない。沿海戦闘艦と交代して撤退するとみられていた掃海艦は当分、配備が継続されることとなった。

米国議会調査局(CRS)のレポートによれば、すでに配備されている4隻を含んで2020会計年度までに調達あるいは調達計画中の沿海戦闘艦は20隻になるが、現在のところ建造中の隻数は8隻にとどまっている。その後の調達については不透明になっているため、佐世保配備は未定と思われる。

強襲揚陸艦ボノム・リシャールは3月27日から4月7日まで韓国で行われた「双竜(SSANG YONG)」訓練にドック型輸送揚陸艦グリーンベイ、ドック型揚陸艦アシュランドとともに参加したが、強襲揚陸艦を中心とした遠征打撃群(ESG)はボノム・リシャールESGだけだったようで、前年と比較すると限定的な規模だったようだ。

佐世保に昨年入港した米海軍の隻数は延べ206隻となり、昨年同数となったが、駆逐艦など作戦艦が減少する一方、補給・補助艦船の入港は増加した。
主要なところでは、原潜は8隻が延べ13回寄港した。原潜の寄港回数は佐世保に限ってみれば3年連続で減少から一転して増加しているが、日本全体(佐世保、横須賀、沖縄)の合計寄港回数ではこの3年、ほとんど変化していない。在日米海軍基地全体でみれば、沖縄・ホワイトビーチ基地の桟橋に2012年に艦船係留支援設備(通称「コールド・アイアン」)が設置された関係で一時的に寄港回数が増加したが、それを除けばこの3年、増減はほとんどない。原潜の日本寄港回数と周辺の情勢とは連動していないようだ。

洋上補給艦のうち旧型の弾薬補給艦(AE)と戦闘給糧艦(AFS)がすべて退役し、代わって投入された貨物弾薬補給艦(AKE)が50回寄港した一方、更新計画が進められている燃料補給艦(AO)は14回寄港した。
音響測定艦、測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦といった情報収集艦では音響測定艦の寄港回数は再び増加傾向にある。

2009年12月に隣接する平瀬係船池に大型の岸壁が完成し運用が開始されて以降、現在は強襲揚陸艦ボノム・リシャールとドック型揚陸艦が停泊している。余裕ができた立神岸壁には洋上補給艦や音響測定艦、測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦などの情報収集艦の停泊が増加した。

揚陸補助艦が新規参入
米軍の揚陸手段に変化が表れている。これまでの強襲揚陸艦やドック型揚陸艦を使った揚陸作戦を支えるため新たな種類の艦船の開発と配備が進められているが、そのうちの一つがMLP(Mobile Landing Platform)と命名された揚陸補助艦で、洋上や岸壁などで揚陸艦に直接、LCACや戦闘車両を積み替えるシステムを持った輸送艦だ。一番艦のモンフォード・ポイントが横浜や横須賀、佐世保に寄港し、試験航海のような動きを見せている。モンフォード・ポイントは34名の民間人(MSC所属)で運用されており、これまでの揚陸艦から比較すると格段の人員削減が可能となっている。すでに3番艦までの建造が進められているところから、今後の進展によっては佐世保に配備されている揚陸艦にも影響が出てくるだろう。

オスプレイ(MV22)が飛来
米軍普天間基地に配備されている新型の輸送機オスプレイが日本各地の基地に飛来しているが、佐世保には3月に3回(4機)、11月から12月にかけて3回(4機)が飛来した。
米海軍佐世保基地には航空機を受け入れ・支援できる施設はないが、オスプレイはいずれも赤崎貯油所にある設定してあるヘリパットに着陸し、タンクローリー車から燃料の補給を受けていた。
外務省が佐世保市に連絡してきた内容によると、3月の一連の飛来は沖合に展開していた強襲揚陸艦ボノム・リシャールから、急患などの人員輸送のため、ということだった。しかし、11月からの一連の飛来は普天間基地から直接飛来してきたとされ、飛行ルートの確認や低空飛行訓練、受け入れ施設の点検などが目的であったと思われる。

(RIMPEACE編集委員・佐世保)



佐世保母港艦船の動き
増加する情報収集艦の寄港
増加した洋上補給艦
戦闘・作戦艦の動き
2015年入港艦船一覧


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