はじめに

米国の新しい大統領のもとで迎えた一年だったが、基本的な国家安全保障戦略についての方針が示されたのが2017年12月であったため、米海軍基地への影響は明確には見えなかった。

それでも、前大統領のもとで策定された「再均衡(REBALANCE)」政策に基づく米海軍の艦船建造計画(Shipbuilding Plans)に代わり海軍艦船の増加方針が示され、今後30年間で355隻体制とする計画が承認された。

だが、引き続く海軍関係予算の削減により予定された艦船建造が計画のように進むかどうか、米国議会調査局(CRS)が上・下院に提出したレポート「Navy Force Structure and Shipbuilding Plans」ではいくつかの問題点が指摘されている。例えば、355隻体制にするための5年ごとの建造計画では、米国内の造船所の建造能力が不足していることが指摘されている。そのため、退役予定の艦船の寿命延長計画(Ship Life Enhancement Plan)や、退役から間もない艦船の再就役などが必要、と指摘している。

このことは米海軍佐世保基地(CFAS)に配備されている艦船の活動や訓練、再配備計画に微妙な影響を与えている。横須賀に配備されている巡洋艦や駆逐艦の相次ぐ事故は乗組員の訓練不足によるものとされ、その背後には海軍の予算不足が指摘されている。佐世保基地に配備されている揚陸艦についても沖縄に駐留する海兵隊(31MEU)のスケジュールが優先するため、操船訓練などの基礎的トレーニングが不足するという、横須賀と同様の問題を抱えているようだ。

佐世保基地の配備艦船では以前から計画されていた掃海艦(MCM)の退役と新型の沿海域戦闘艦(LCS)への交代は、調達計画が米国議会で大きく削減された影響で配備のスケジュールはいまだに明確ではない。沿海域戦闘艦と交代して撤退するとみられていた掃海艦は当分、配備が継続されることとなった。

米国議会調査局(CRS)のレポートによれば、沿海域戦闘艦は2021会計年度までに調達済の8隻と調達計画中の12隻を含めて20隻になるが、現在のところ就役中の隻数は8隻にとどまっている。その後の調達については不透明になっているため、佐世保配備は未定と思われる。

また、新型のズムウォルト級駆逐艦(DDG1000)は2隻目以降の建造予算が今年度も認められなかったため、米国議会で海軍が表明した佐世保への寄港などは見通しはたっていない。

強襲揚陸艦ボノム・リシャールと交代する同型の強襲揚陸艦ワスプは母港のバージニア州ノーフォーク海軍基地を出発したが、カリブ海でのハリケーン被害救援(HA/DR)のため佐世保到着が遅れ、交代は2018年1月中となった。

佐世保に配備されている強襲揚陸艦(LHD)ボノム・リシャールは2月27日に出港後、定例となった東アジアのパトロールに出かけた。一方、ドック型輸送揚陸艦(LPD)グリーンベイはタイで行われたコブラ・ゴールド訓練に参加したが、今回はホバークラフト型揚陸艇(LCAC)ではなく、旧来の大型汎用型揚陸艇(LCU)を搭載していた。

3月から5月にかけての時期、朝鮮半島の危機を煽るような論調のフェイク・ニュースがあふれていたが、佐世保に配備されている揚陸艦隊は朝鮮半島から離れた海域に展開していた。

揚陸艦隊が参加した訓練で最大のものは隔年ごとにオーストラリアで行われるタリスマン・セーバー訓練で、今回は7月8日から20日までオーストラリア周辺海域で繰り広げられた。この訓練には3隻の揚陸艦と横須賀に配備されている空母ロナルド・レーガン、駆逐艦バリー、同マキャンベル、同シャイローが参加した。

配備艦船以外の動きでは、佐世保に17年に入港した米海軍艦船の回数は延べ150回となり、前年(16年)の214回から大きく減少した。

主なところでは原子力潜水艦が前年の24回から過去最多の26回に増加した一方、、駆逐艦が前年の19回から7回に、貨物弾薬補給艦が前年の61回から41回に減少するなどした。

原子力空母は日本周辺で3隻(ロナルド・レーガン、カール・ビンソン、ニミッツ)が日本周辺で行動したが、朝鮮半島情勢に対応して活動を活発化、という観測とは関係なく、インド洋から東アジアにかけて展開した。この艦隊の補給にあたる高速戦闘補給艦は日本には寄港せず、また、燃料補給艦は増加したが、貨物弾薬補給艦は減少した。

複数の空母艦隊が北朝鮮に圧力をかけるために展開した、という一部のキャンペーンは補給艦の動きからは見えなかった。

米海軍は洋上で揚陸艦などに戦闘機材や車両などを補給する新しいタイプの遠征輸送艦(ExpeditionaryTransferDock ESD 約78,000トン)や遠征機動艦(ExpeditionaryMobile BaseDock ESB 約90,000トン)など揚陸補助艦を開発している。また、海兵遠征ユニット(MEU)上陸大隊チームを高速輸送するための艦船(Expeditionary Fast Transport EPF 2500トン)などを新たに開発し、就役させている。

このうちESDモンフォード・ポイントは横浜港を拠点に運用実験を行い、佐世保に寄港した。西海町横瀬に配備されているホバークラフト型揚陸艇(LCAC)が昨年末、地元の西海町(当時、現・西海市)と防衛省との協定を無視して夜間航行訓練を行ったが、米海軍によれば、新しい揚陸艇(SSC)と交代にLCACは近い将来、運用が終わるという。

洋上補給艦のうち貨物弾薬補給艦(AKE)が過去最多の61回となった16年から41回に減少した一方、更新計画が進められている燃料補給艦(AO)は前年(13回)を上回る18回寄港した。

音響測定艦、測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦といった情報収集艦では音響測定艦の寄港回数はいずれも減少したが、佐世保基地を拠点化していることを示すように1寄港あたりの停泊日数は増加している。


高速輸送艦・揚陸補助艦

米軍の揚陸手段に変化が表れている。米海軍の将来艦隊計画(FYSBP)で見ると、ESDExpeditionary Transport Dock MLPから変更 約78,000トン)やESBExpeditionary Mobile Base 約90,000トン)といった新しい種類の揚陸補助艦を運用し、これまでの揚陸艦を使った貨物や車両の揚陸作戦を支えるため新たな種類の艦船の開発と配備が進められている。ESDESBは洋上や岸壁などで揚陸艦に直接、LCACや戦闘車両を積み替えるシステムを持っている。また、同時に予算削減のため実際の運航を民間委託する流れが定着している。最初に就役したモンフォード・ポイントが横浜や横須賀、佐世保に寄港している。

現在、ESDは2隻が就役し、ESBは1隻が就役し、2隻が建造中となっている。

もう一つが、MEU(海兵隊遠征ユニット)の1個上陸戦闘部隊(MAGTF 海兵空地任務部隊)を車両や装備とともに高速長距離輸送できる輸送艦(EPF Expeditionary Fast Transport)の配備で、現在までに8隻が配備され、将来は12隻体制での運用が進められている。

また、これまで海岸への上陸の強力な手段、とされていたLCAC(ホバークラフト型揚陸艇)は海軍予算では調達打ち止めとなり、新たな揚陸手段(SSC Ship to Shore Connecter)が研究されている。

今後の進展によっては佐世保に配備されている揚陸艦の運用にも影響が出てくるだろう。

(入港艦船の種類と艦船名は別表[寄港艦船の名称]のとおり)

 

 引き続いた新型輸送機オスプレイの飛来

 佐世保基地には2015年3月以来、米軍普天間基地に配備された新型輸送機オスプレイの飛来が続いている。2017年は飛来数こそ減少したが、12月16日にはジョン・リチャードソン海軍作戦部長を乗せて飛来してきた。

 飛来目的は明らかにされていないが、佐世保に来る前には韓国、佐世保の後には横須賀に姿を見せているところから、就任後の施設の見学・視察のためだったようだ。。

日本各地で機体の不具合などが起きているが、佐世保への飛来について事前の通告はない。

 

 


佐世保母港艦船の動き
減少傾向となった情報収集艦の寄港
急減した洋上補給艦
戦闘艦の動き
2017年入港艦船一覧


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