減少傾向となった情報収集艦の寄港

2006年以降、潜水艦の捜索と情報収集を任務とする音響測定艦及び海底地形や潮流など潜水艦の行動にかかわる情報を収集する測量(海洋調査)艦の寄港が急増したが、2010年をピークに、以後は減少傾向が続いている。また、弾道ミサイル観測艦は自国及び他国の弾道ミサイル発射に関連した寄港が続いていた。

これまで音響測定艦の寄港回数が突出していた。しかし、2006年から始まった音響測定艦の寄港は2010年(39回)をピークに、15年(29回)、16年(27回)、17年(21回)と減少を続けている。

音響測定艦は潜水艦を捜索・追尾することを任務としているが、米海軍が運用する5隻の音響測定艦のすべてが西太平洋に展開しているところから、中国や北朝鮮の潜水艦を主要な捜索の対象にしてと思われる。特に中国海軍(人民解放軍海軍)の潜水艦については行動範囲がグアム周辺の西太平洋にまで広がり、さらに静粛性も向上しているところから、重点的に調査している様子がうかがわれる。

寄港回数は減少したものの、この状況はこの数年変わらないようで、佐世保を中心に任務に当たっているようだ。乗組員の休養や艦の維持作業のため停泊期間が長期化する傾向にあり、活動の拠点化を示すように2隻あるいは3隻が同時に停泊するケースも増え、停泊日数が延べ461日(16年は429日)となり、平均停泊日数は増加している。

2006年までは佐世保にほとんど寄港することがなかった音響測定艦が2010米会計年度以降に増加した背景には、外洋の深海から大陸沿岸の水深が比較的浅い海域を任務海域にするという米海軍の潜水艦の運用の変更と合わせ、中国海軍の急速な海洋進出と関係があると思われる。しかし一方、米海軍情報部が米国議会に提出した報告によれば、中国海軍の洋上作戦艦や原潜などが近年の内に対抗勢力になるとは分析していない。。

情報収集艦は西太平洋補給運用司令部(COMLOGWESTPAC 事務所はシンガポール)の指揮下にあり、南シナ海および東シナ海、フィリピン海、日本海で任務にあたっているようで、佐世保や沖縄への寄港は休養や補給、連絡のためだろう。

音響測定艦は佐世保以外では沖縄・ホワイトビーチに合計13回(16年は12回)、横須賀には1回寄港している。活動海域に近いということで、佐世保と沖縄・ホワイトビーチに寄港が集中しているのだろう。

また、2014年から前任のオブザベーション・アイランドと交代した弾道ミサイル観測艦ハワード・O・ローレンセンは4回(16年は8回)寄港した。一回の停泊期間は依然と大きな変化がなく、周辺での弾道ミサイル発射情報や自国の訓練に合わせて移動するという運用方法は変わっていないようだ。



一方、海底の地形や潮流などを調査する測量艦の寄港は2001年以降増減を繰り返していた。2016年は9回と変わらなかったが、17年は3回と減少し、2000年以降では最も少ない寄港回数となった。また、国内のほかの米軍施設(横須賀、横浜、沖縄)への寄港も少ない。ただ、2009年にも7回と減少したが、翌年には22回と急増しており、寄港回数の減少が活動の低下を示すものかどうかは不明。

また、情報収集艦はたびたび東シナ海や南シナ海で中国の艦船とトラブルを起こしており、そのたびに横須賀に配備されている駆逐艦が駆け付けるという、緊張した状況が続いている。

米海軍が運用する測量艦(6隻)のうち16年は3隻が佐世保に寄港したが、17年は1隻だけだった。

音響測定艦と測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦など情報収集艦船の入港回数は、母港艦を除いた艦船の入港回数の18.7%(16年は29・3%)%となった。

 




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