情報収集艦 激減した音響測定艦

潜水艦の発する音を調査する音響測定艦の寄港は2006年から目立ち、2009年以降急激に増加していたが、2019年は急減し、年間2隻にとどまった。また、海底地形や潮流など潜水艦の行動にかかわる 情報を収集する測量(海洋調査)艦の寄港が急増したが、2010年をピークに、以後は減少傾向が続き、2019年は4隻にとどまった。また、弾道ミサイル観測艦は自国及び他国の弾道ミサイル発射に 関連した寄港が続いている。

2006年から始まった音響測定艦の寄港は2010年(39回)をピークに、15年(29回)、16年(27回)、17年(21回)と減少を続けていた。
一方、これまであまり寄港していなかった横浜港ノースドックには年間18回、沖縄・ホワイトビーチに19回寄港している。横浜の停泊では長期間停泊することが多く、対して沖縄では数日間の停泊 が主など、港によって違いが目立つ。横浜では長期のメンテナンス作業を受けており、運用の拠点が横浜に移ったものと思われる。

佐世保の寄港が減少し横浜が増加した背景には、音響測定艦への支援体制の問題があるものと思われる。
音響測定艦は潜水艦を捜索・追尾することを任務としているが、米海軍が運用する5隻の音響測定艦のすべてが西太平洋に展開しているところから、中国や北朝鮮の潜水艦を主要な捜索の対象にし ていると思われる。特に中国海軍(人民解放軍海軍)の潜水艦については行動範囲がグアム周辺の西太平洋にまで広がり、さらに静粛性も向上しているところから、重点的に調査している様子がう かがわれる。

佐世保への寄港回数は減少したものの、在日米軍基地全体としては外洋の深海を主要な作戦海域としていた東西冷戦が終結したことから、大陸沿岸の水深が比較的浅い海域までを任務海域にすると いう米海軍の潜水艦の運用の変更と合わせ、中国海軍の急速な海洋進出活発監視活動が続いているようで、この状況はこの数年変わらないだろう。

継続されている潜水艦への監視活動の結果、米海軍情報部(ONI)が米国議会に提出した報告によれば、中国海軍は近代化・大型化しているものの、洋上戦闘艦や原潜を含んだ潜水艦などが近年の内 に対抗勢力になるとは分析していない。

情報収集艦は西太平洋補給運用司令部(COMLOGWESTPAC 事務所はシンガポール)の指揮下にあり、インド洋、南シナ海および東シナ海、フィリピン海、日本海など西太平洋海域で任務にあたって いるようで、音響測定艦は佐世保以外では沖縄・ホワイトビーチと横須賀に寄港している。

また、弾道ミサイル観測艦ハワード・O・ローレンセンは8回(18年は12回)寄港した。一回の停泊期間は依然と大きな変化がなく、周辺での弾道ミサイル発射情報や自国の訓練に合わせて移動する という運用方法は変わっていないようだ。
(グラフ【情報収集艦の推移】及び【音響測定艦】参照)

また、海底の地形や潮流などを調査する測量(海洋調査)艦は佐世保には2013年に19回寄港して以来、14年7回、15年9回、16年9回、17年は3回、18年2回と減少し、19年は4回寄港した。19年は横浜 に3回、ホワイトビーチに2回と全体としても減少している。ただ、2009年にも7回と減少したが、翌年には22回と急増しており、寄港回数の減少が活動の低下を示すものかどうかは不明。

また、情報収集艦は東シナ海や南シナ海で中国の艦船が接近するなど、たびたびトラブルを起こしており、そのたびに近くを航行中の駆逐艦が駆け付けるという、緊張した状況が続いている。

音響測定艦と測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦など情報収集艦船の入港回数は、母港艦を除いた艦船の入港回数の9・5%(18年は23・2%)と激減した。
(グラフ【艦種別入港隻数の推移】参照)




(RIMPEACE編集委員・佐世保)


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