洋上補給艦 再び増加へ


佐世保港に寄港する米軍艦船では燃料補給艦(AO)、貨物弾薬補給艦(AKE)、高速戦闘支援艦(AOE)といった洋上補給艦が主要な艦種だが、入港数では過去最多となった16年以来の入港数となった。(16年79回、17年59回、18年46回、19年64回、20年76回)

入港した艦船の用途別(作戦艦、洋上補給艦、貨物輸送艦、燃料輸送船、情報収集艦、各種補助艦船)の割合では洋上補給艦が59%を占め、引き続き最も多くなっている。

なかでも弾薬、食糧、被服、備品、燃料を統合して洋上補給できるルイス&クラーク級貨物弾薬補給艦(満載排水量4万トン超 艦種記号=AKE)が2008年の初寄港以来、寄港回数が増えており、洋上補給艦全体の59.2%(19年は57・8%、18年は69・6%)を占めている。

理由としては艦船や航空機の燃料を補給する燃料補給艦(満載排水量4万2千トン、艦種記号=AO)、空母戦闘群に随伴して行動する高速戦闘支援艦(満載排水量4万9千トン、艦種記号=AOE)の任務も一部受け持ったこと、佐世保基地の弾薬設備の老朽化で最新型のミサイルや爆弾などが貯蔵できないため必要なだけの少量補給が増え、また被服や雑貨などの補給が増加したためと思われる。

さらに20年は、新型肺炎対策で空母や巡洋艦、駆逐艦などの洋上作戦艦が寄港を敬遠し、洋上補給に切り替えたためと推測される。

貨物弾薬補給艦の西太平洋での拠点はグアム・アプラ港だが、作戦海域である東シナ海や南シナ海などとの地理的関係、あるいは燃料備蓄施設の充実の理由から日本では佐世保に集中的に寄港しており、日本国内の基地で佐世保以外では横須賀に10回、沖縄・天願に7回寄港した。

なお、米海軍は貨物弾薬補給艦を14隻運用(20年12月現在)しているが、そのうちの2隻(ルイス$クラーク、サカジャウィア)は海兵隊専用として運用されている。

20年中に佐世保には14隻中8隻が寄港したが、西太平洋の補給拠点・グアム、韓国海軍基地がある韓国慶尚南道・鎮海(チネ)や戦時補給施設に指定されている慶尚南道・光陽(クァンヤン)、フィリピン・スービックおよびシンガポールとの行き来が目立っているが、佐世保ほど寄港が集中しているところはないようだ。

一方、燃料補給艦の寄港回数は2008年(33回)に並ぶ31回となり、燃料を搬入する大型タンカー(戦略給油船 AOT)は15回と前年(11回)を超え、新型肺炎拡大の影響がここにも表れている。

現在運用されているヘンリー・J・カイザー級の燃料補給艦は1986年から運用が始まり、1995年に最終艦のラパハノックが就役しており、老朽化が指摘されていた。このため米海軍の将来艦隊計画によると、燃料補給艦は新型への更新が計画されている。

(RIMPEACE編集委員・佐世保)


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