米海軍佐世保基地の動き=2025年=

リムピース編集委員 篠崎正人

 はじめに


 この数年、日本では「中国が台湾に武力侵攻する」という仮定に基づいて自衛隊の南西諸島配備が急速に進められている。一時期は「北朝鮮が日本を攻撃する」というキャンペーンで自衛隊の強化と近代化が進められたが、弾道ミサイルを除けば直接侵攻の可能性は、必然性も能力も疑問視されたことで話題から遠ざかってしまったようだ。

 インド・太平洋の経済権益と軍事的優位性を目指す米国の新しい国家防衛戦略(NDS)が策定されたが、米本土防衛あるいは南北アメリカ大陸防衛に注力し、欧州への関与を縮小する一方、台湾をめぐっては中国との軍事的緊張は避けるような配慮をにじませた内容となっているようだ。

 その影響なのか、あるいは強襲揚陸艦がアメリカからトリポリに交代した影響なのか、佐世保基地に配備されている揚陸艦隊の動きは減少した。

 2019年12月から佐世保基地に配備されていた強襲揚陸艦アメリカが定期のローテーションを理由に同型のトリポリと交代した。また、旧型のホイッドビー・アイランド級のドック型揚陸艦は一部退役が進められているが、後継となる新型の揚陸艦の建造が進んでいないため、佐世保基地に配備されているラシュモア以外も当分現役に留まるようだ。

 海兵隊の新しい2030戦力計画では、海兵隊が強襲揚陸作戦を実施することが主要任務から除外されたことで、上陸作戦の前段で行われる航路警戒・機雷掃海作業の機会も減少することとなる。このため米海軍が運用する掃海艦は退役が進められ、中東バーレーンに配備されていた2隻が2025年9月に退役し、就役しているのは佐世保の4隻だけとなった。 米海軍の艦隊編成と建造計画(Navy Force Structure and Shipbuilding Plans)によれば、艦船の355隻体制は引き続き目標として維持されるが、加えて今後は無人化及び艦船の小型化が進められる見通しが明らかにされている。

 一部艦船については米国内造船業の能力不足を補うため、フィリー造船所(フィラデルフィア州)を韓国のハンファ・オーシャンが買収する、あるいはオーストラリアのオースタル(Austal US)が米国アラバマ州モービルに造船所を設立して戦闘艦や輸送艦を建造するなどの動きが出ている。

 しかし、国防総省は年次報告で2045年までに510隻体制(有人艦艇377隻、大型無人艦艇134隻)を達成することを明らかにしたが、縮小した米国内の造船業の現状から、実現を疑問視する意見があり、不足する造船業の能力を補うため海軍用船(USNS)の修理については日本(三菱重工、ジャパン・マリン・ユナイテッド、佐世保重工)や韓国(現代重工業、ハンファオーシャン)の造船所を使うことが進められている。

 また、前方配備されている軍艦(USS)については米国の法律の関係で、米海軍の艦船支援部隊(Naval Sea Systems Command)がメンテナンスを担当するが、艦船修理部隊(SRF JRMC)が佐世保でも充実してきており、要員のためと思われる住宅建設が基地周辺の地域で目立ってきている。

 なお、佐世保市街地に近い場所にある前畑弾薬庫は、佐世保市内の針尾島弾薬集積所に移転することを前提に2011年に移転が合意されていたが、2025年8月、移転先の施設や配備について最終的に合意した。このことについて地元説明会が開かれたが、防衛省の説明によると、埋め立てと覆土式の弾薬施設建設のため、工期はおおむね十数年の期間を要するという。

― 入港隻数は減少傾向 ―
 配備艦船を除く艦船の入港回数では、佐世保に2025年に入港した米海軍艦船は延べ109回(24年 114回、23年140回、22年137回 21年110回、20年130回、19年の157回、18年144回)と、若干減少した。

 戦闘艦で増加したのは原子力潜水艦で、寄港回数は16回(うち、佐世保港外に1回)と前年から急増し、新型肺炎(コロナ感染症)が拡大した以降では最多となった。

 駆逐艦と巡洋艦などの洋上作戦艦の入港数では、駆逐艦の寄港回数が4回増加した。

 減少が目立ったのは西太平洋地域の米軍基地に燃料を配送する中型のタンカー(AOG)で、前年の21回から25年は5回に減少した。しかし一方、燃料を運び込む大型のタンカーは17回から22回の増加しており、燃料の備蓄量が増加しているものと思われる。ちなみに、タンカーの船籍は様々だったが、25年は全て米国籍タンカーだった。アメリカ・ファーストなのだろうか。

 駆逐艦の寄港回数(14回)は若干増加したが周辺情勢によるものか、米海軍艦船のメンテナンスや修理を受け持つ艦船修理廠(SRF JRMC)の体制強化が影響しているのかは明確でない。なお、寄港した駆逐艦は2隻3回を除き横須賀基地に配備されている。

 原子力潜水艦は新型肺炎の拡大で減少していた19年以降では最多となる8隻が16回寄港し、24年の1隻3回から大きく増加した。21年は0隻、22年は1隻1回、23年は3隻5回だった。
 なお、日本国内では横須賀に11回、沖縄・ホワイトビーチに19回寄港した。

 音響測定艦、測量(海洋調査)艦など情報収集艦は、拠点が国内では横浜港に移った結果、測量艦2隻が3回、音響測定艦が1隻2回、弾道ミサイル観測艦は1隻が5回寄港した。

 艦種別で見ると、母港としている艦を除いた入港艦船の艦種別(作戦艦、洋上補給艦、貨物輸送艦、燃料輸送船、情報収集艦、各種補助艦船)の割合では作戦艦が35%、洋上補給艦が32%、燃料輸送船が27%で、補給艦と燃料輸送船の2種だけで入港艦船の大半(59%)を占めている。

(グラフ【入港隻数の推移】参照)

(RIMPEACE編集委員・佐世保 篠崎正人)


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2025年 寄港艦船の一覧


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