シリーズ「音響測定艦の動きを探る」−2

音響測定艦の活動領域


「低周波アクティブソナーが環境に与える影響についての補足文書」より

米議会が承認した、低周波アクティブ(LFA)ソナーを海軍が使っていい、という海域が上図の白線で囲まれた海域だ(その後、黄線の海域に拡大)。海洋生物の保護と、最新のディーゼル潜水艦を探知するという軍事的な要求とのせめぎあいの中で引かれた線だ。
この広大な海域の中のどこで音響測定艦が活動しているのかを特定するには、この数年間の音響測定艦の入港実績が手がかりになる。

この図はLFAソナーを使用する海域を示している。現在米海軍でこのLFAソナーを装備しているのはコリー・ショウエストとインペッカブルだけだ。残りの3隻の音響測定艦は未だLFAソナーを装備していない。
しかし、残りの3隻も長い海中ケーブルに潜ませたパッシブソナーで潜水艦の動きを追っている。銃の種類や射程距離の違いにかかわらず、狩人は獲物の居そうな場所を探すものだ。LFA未搭載の音響測定艦は、LFA搭載艦の活動海域と重なっていると考えなければならない。

低周波アクティブ(LFA)ソナーが環境に与える影響についての補足文書(SEIS文書)には、海軍作戦副部長が2003年3月に上院軍事委員会の小委員会でLFAについて行った証言が載っている。
「世界にはおよそ500隻の米国以外の潜水艦が存在し、そのほぼ半数は米国と同盟関係にない国の所属だ。最も注目すべきは、中国、イラン、北朝鮮が持つ、強力な魚雷や巡航ミサイルを装備した、新型のきわめて静粛なディーゼル・電力駆動の潜水艦だ」
「これらのディーゼル潜水艦は、パッシブソナーを使っている米軍や同盟国の艦船では捕捉することが困難な距離から、我々の艦船を攻撃することが出来る。SURTASS LFA(パッシブソナーと組み合わされた低周波アクティブソナー)のようなシステムを、他の対潜センサーや対潜兵器とともに使うことが、敵性の潜水艦が我々の艦隊に近づく前に探知し、居場所を特定し、破壊したり攻撃を避けたりするために必要だ。」

ここで名指しされている3国中2国の沿岸に、LFA使用海域が広がっている。日本海、東シナ海、南シナ海の海域が、中国や北朝鮮の港から出港した潜水艦が一番潜んでいると見られる海域だ。
私たちが得ている寄港実績データも、音響測定艦が沖縄近海で活動していることを裏付けている。今や音響測定艦の実質母港となった横浜ノースドックから出港し、2ヶ月前後で戻ってくる間に、那覇軍港やホワイトビーチに短期間寄港することが、何回も確認されている。特にコリー・ショウエストの場合、「西太平洋でLFAのテストと訓練を開始した」とSEIS文書に書かれている2003年1月25日以降、長い航海で横浜に戻ってくる直前に寄港した港は、ほとんどが那覇軍港となっている。
また、頻度は少ないが音響測定艦が佐世保に寄港した例もある。日本海もしくは東シナ海北部での任務の途中に、短い寄港を行ったと見ていいだろう。
今年の3月には、エフェクティブと見られる音響測定艦が、任務として沖縄本島のすぐ近くの海域で、パターンを描いて航行しているのが目撃された。寄港実績だけではなく、実際に活動中の海域が確かめられた。沖縄近海が音響測定艦の主な活動海域になっていることの直接証拠とも言える。

横浜ノースドックでの音響測定艦の停泊日数は近年とみに増えた。インペッカブル、ロイヤルも日本初寄港のあと、ノースドックに繰り返し寄港することが定着した。潜水艦捜索任務に従事する米海軍の5隻の音響測定艦が全て、横浜ノースドックを実質的な母港として、沖縄周辺海域などで中国や北朝鮮の潜水艦を追いかけていることが、これまでよりはっきりしてきた。

(RIMPEACE編集部)

1.はじめに
2.音響測定艦の活動領域(このページ)
3.今後の音響測定艦と低周波アクティブソナーの配備計画
4.LFA搭載艦の横浜ノースドック寄港後の動き


'2006-5-7|HOME|