米海軍佐世保基地の動き=2021年= はじめに


終息の見通しが立たない新型肺炎(COVID-19)の拡大は影響を与えているようだ。2021年に米海軍佐世保基地に寄港した艦船の動きにも様々な変化があったが、これが新型肺炎によるものなのか、あるいは戦略の変化によるものなのか、断定できないものがある。

アジアに残された最後の東西冷戦の残滓が終結することへの期待が膨らんだ米朝会談がトランプ前米国大統領のパフォーマンスで終わったことによる影響も見逃せない。

米国のバイデン政権が旧来の「忍耐と圧力」路線に戻ったとすれば、朝鮮半島の平和と安定の実現は遠のくのかもしれない。

朝鮮半島情勢では、2018年から始まった米朝会談に配慮して中止あるいは規模を縮小してきた米韓合同の実動訓練は2021年も引き続き取りやめとなった。

それでも拡大が続く新型肺炎の影響もあってか、、東アジア地域で大規模な軍事訓練は行われず、沖縄に司令部を置くARG(揚陸即応群)と佐世保に配備されている揚陸艦隊(PHIBRON‐11)の艦船は大きな訓練に参加することなく、西太平洋に展開した。

目立った朝鮮国連軍艦船
これまで、朝鮮国連軍の基地として利用されてきた日本国内4県7か所(長崎県・佐世保海軍施設、沖縄県・嘉手納飛行場、普天間飛行場、ホワイトビーチ海軍施設、神奈川県・座間補給施設、横須賀海軍施設、東京都・横田飛行場)は国連軍地位協定により、日米地位協定(SOFA)とほぼ同様の権利が与えられ、そのまま維持されてきた。だがもし、朝鮮戦争が終結した場合、朝鮮国連軍に参加する11か国に認められてきた日本の領土・領海・領空での特権的な作戦行動や施設の利用ができなくなる。その前の「駆け込み」と思われるような各国艦船の寄港が2019年までは相次いでいた。

米朝会談への期待がさめた2020年に寄港した米国以外の艦船は2隻(2019年には10隻)にとどまっていたが、2021年には再び4か国11隻(国連軍に参加していないインドを含めると、12隻)に増加した。この増減は新型肺炎感染拡大の影響なのか、それとも別の要因なのか、検討が必要だ。

入港隻数の減少は新型肺炎の影響か
配備艦船を除く艦船の入港回数では、佐世保に2021年に入港した米海軍艦船は延べ110回で、20年の130回、19年の157回、18年144回から減少が続いている。

特に原子力潜水艦は18年の15回、19年の14回、20年の1隻2回からと大きく減少し、0隻となった。原子力潜水艦の寄港がなかったのは1990年以来。周辺海域には引き続き原潜が展開し、横須賀への寄港も続いているところから、「不要不急」な寄港を取りやめたことによるものだろう。

洋上戦闘艦(駆逐艦、巡洋艦など)は18年11回、19年18回、20年11回、21年18回と増加傾向にある。南シナ海や東シナ海、フィリピン海を通過してくる場合が多いようだ。それ以外にも佐世保に寄港した駆逐艦の1隻はロシア・ウラジオストーク沖のピョートル大帝湾にも展開していた。

洋上補給艦(貨物弾薬補給艦、燃料補給艦)は18年の46回から64回(19年)、76回(20年)と増加したが、21年は54回と減少した。新型肺炎感染防止のため、洋上戦闘艦が寄港せずに活動するため、洋上補給艦の任務が増えた結果と思われるが、周辺海域での大規模訓練が減少したためだろう。

音響測定艦、測量(海洋調査)艦、弾道ミサイル観測艦といった情報収集艦のうち音響測定艦は減少し、測量艦の寄港はなかった。測量艦の寄港がなかったのは、記録が残っている範囲では初めてのこととなった。


(RIMPEACE編集委員・佐世保)


佐世保母港艦船の動き
情報収集艦は減少 測量艦の寄港はなし
洋上補給艦は減少
戦闘艦の動き
高速輸送艦・揚陸補助艦
増加した朝鮮国連軍参加国艦船
2021年入港艦船一覧


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