高速輸送艦・揚陸補助艦

米海兵隊の新しい戦力計画(いわゆる「2030計画」)は、これまで海兵隊が主要な任務としていた強襲上陸から、移動能力の高い「海兵沿岸戦闘沿海域連隊(MLR)」に転換しようとするもの。新しい戦力デザインにあわせた艦船の実験的展開が始まっている。その主要な輸送手段が高速輸送艦と揚陸補助艦と思われる。

米海軍の将来艦隊計画(FYSBP)で見ると、ESD(Expeditionary Transfer Dock 約78,000トン)や派生型のESB(Expeditionary Mobile Base 約90,000トン)といった新しい種類の揚陸補助艦を運用し、これまでの揚陸艦を使った貨物や車両の揚陸から、洋上あるいは受け入れ支援国の港湾を使った輸送・揚陸手段を追加している。

この方式を支えるため新たな種類の艦船の開発と配備が進められている。全面的な変更ではないようだが、ESDやESBは洋上や岸壁などで揚陸艦に直接、LCACや戦闘車両を積み替えるシステムを持っている。また、同時に予算削減のため実際の運航をMARSK海運など民間会社に委託する流れが定着している。

新型揚陸補助艦
最初に就役したモンフォード・ポイント(ESD)が横浜や横須賀、佐世保に寄港していたが、21年には改良型の揚陸補助艦(ESB)の配備が進められている。

現在、ESBは3隻が就役しているがそのうちに1隻ミゲル・キースが佐世保、沖縄、岩国相次いで寄港した。今後進む海兵隊の再編計画と関連した動きだろう。

もう一つが、MEU(海兵隊遠征ユニット)の連隊規模の1個上陸戦闘部隊(MAGTF 海兵空地任務部隊)を車両や装備とともに高速長距離輸送できる輸送艦(EPF=Expeditionary Fast Transport およびHST=High Speed Transport)の配備で、EPFは現在までに10隻が配備され、将来は12隻体制での運用が進められ、HSTは民間の高速フェリーを取得して運用している。

佐世保には20年にはEPFが1隻1回寄港していたが、21年にはHSTグアムが2回寄港した。

また、これまで海岸への上陸の強力な手段、とされていたLCAC(ホバークラフト型揚陸艇)は海軍予算では調達打ち止めとなっていたが、新たな揚陸手段(SSC Ship to Shore Connecter)が開発され、2022米会計年度にも配備が始まるようだ。また、旧型の1600型LCUに代わる1700型LCUの開発も行われている。

今後の進展によっては佐世保に配備されている揚陸艦の運用にも影響が出てくるだろう。

(入港艦船の種類と艦船名は別表「2021年入港艦船一覧」のとおり)

(RIMPEACE編集委員・佐世保)


米海軍佐世保基地の動き=2021年= はじめに
佐世保母港艦船の動き
情報収集艦は減少 測量艦の寄港はなし
洋上補給艦は減少
戦闘艦の動き
増加した朝鮮国連軍参加国艦船
2021年入港艦船一覧


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