米海軍佐世保基地の動き=2024年=

リムピース編集委員 篠崎正人

 はじめに


 中国と台湾の軍事的緊張がクローズアップされている。台湾を取り囲むように中国人民解放軍(PLA)による訓練海・空域が設定されたことを理由にしたものだが、通告された訓練内容はいずれも「射撃」となっており、ほぼ同じ期間に長崎県・五島列島南方に設定された訓練が「爆撃」となっていることと比較すると、PLAの訓練は抑制されたものでセレモニー的なものとも思える。

 中国と台湾の情勢を理由として自衛隊の南西諸島配備が進められ、朝鮮半島や台湾をめぐる危機がこのところ喧伝されているが、沖縄に駐留する海兵隊を輸送する揚陸艦や強襲上陸に先立って実施される航路啓開作業を担う掃海艦に大きな動きはなかった。

 2020年に海兵隊の将来計画Force Design 2030が公表されてから4年が経つが、佐世保基地にもその影響が少しずつ現れてきている。

 グアムでは、東西冷戦が冷戦終結した後に進められた米軍基地の再編と閉鎖(BRAC)政策により一時は潜水艦母艦フランク・ケーブルが配備されていただけにまで縮小されていた。

 しかし、海兵隊の移駐計画が進展するのに合わせるようにグアム・アプラ港に相次いで艦船の配備が進められた。現在、グアム・アプラ港には原子力潜水艦5隻、潜水艦母艦2隻、揚陸支援艦2隻が配備されている。また、グアムに近い.北マリアナ連邦(サイパン島など)を含めると複数の貨物弾薬補給艦、車両貨物輸送(事前集積)艦が停泊するなど、西太平洋の拠点化が進んでいる。

 海兵隊のグアム移転とセットで揚陸艦隊のグアム移転が提言(グアム商工会議所白書)されたこともあり、今後の動向が注視される。

 佐世保基地に配備されている揚陸艦グリーンベイが定期のローテーションを理由に交代し、同型のサンディエゴが到着した。

 作戦艦の入港数が減少したのは3年連続で、中でも駆逐艦の減少が顕著だった。また、洋上補給艦など補助・補給艦船の寄港が減少したため、入港総隻数も減少した。

 なお、ドック型揚陸艦(LSD)の退役が進められているが、355隻体制を目指した将来艦隊計画を達成するため退役予定だった6隻(艦番号41、42、43、44、46、48)のうち、41番と43番以外は当面現状のまま就役するようだ。同様に退役が進んだアベンジャー級掃海艦(MCM)は就役した14隻のうち残っているのは佐世保に4隻、バーレーン・マナマに4隻だけとなっているが、当初、掃海艦に代わって任務に就くことが計画されていた沿海域戦闘艦(LCS)は能力などの問題から配備が進まず、掃海艦も現状を維持するようだ。

 能力不足が問題になっている沿海域戦闘艦に代わり新型のコンステレーション級フリゲート艦(FFG)の建造が進められている。

 米海軍の艦隊編成と建造計画(Navy Force Structure and Shipbuilding Plans)によれば、艦船の355隻体制は引き続き目標として維持されるが、加えて今後は無人化及び艦船の小型化が進められる見通が明らかにされている。

 しかし、国防総省は年次報告で2045年までに510隻体制(有人艦艇377隻、大型無人艦艇134隻)を達成することを明らかにしたが、縮小した米国内の造船業の現状から、実現を疑問視する意見があり、不足する造船業の能力を補うため海軍用船(USNS)の修理については日本(三菱重工、ジャパン・マリン・ユナイテッド、佐世保重工)や韓国(現代重工業、ハンファオーシャン)の造船所を使うことが進められている。

 また、前方配備されている軍艦(USS)については米国の法律の関係で、米海軍の艦船支援部隊(Naval Sea Systems Command)がメンテナンスを担当するが、艦船修理部隊(SRF JRMC)が佐世保でも充実してきており、要員のためと思われる住宅建設が基地周辺の地域で目立ってきている。

― 入港隻数は減少傾向 ―
配備艦船を除く艦船の入港回数では、佐世保に2024年に入港した米海軍艦船は延べ114回(23年140回、22年137回 21年110回、20年130回、19年の157回、18年144回)に減少した。

 特に減少が目立ったのは駆逐艦(19回が9回に)と燃料補給艦(20回が10回に)で、配備されている掃海艦も35回から26回に減少した。逆に燃料を搬入する大型タンカーは9回から17回に増加した。

 駆逐艦の回数については周辺情勢によるものか、米海軍艦船のメンテナンスや修理を受け持つ艦船修理廠(SRF JRMC)の体制強化が影響しているのは明確でない。

 ちなみに。Naval Sea Systems CommandのHPでは日本で働く米国籍の従業者を募集している。

 原子力潜水艦は1隻が3回寄港した。18年の15回、19年の14回、20年の1隻2回から大きく減少し、21年は0隻、22年は1隻1回、23年は3隻5回となっていた。

 なお、日本国内では横須賀に7隻が10回、沖縄・ホワイトビーチに7隻が12回寄港した。

 音響測定艦、測量(海洋調査)艦など情報収集艦は、拠点が横浜港やフィリピン・スービック、グアムなどに移った結果、測量艦1隻が2回、音響測定艦が1隻1回だけ寄港した。弾道ミサイル観測艦は昨年と同様に1隻が2回寄港した。

(グラフ【入港隻数の推移】及び【艦種別入港隻数の推移】参照)


(RIMPEACE編集委員・佐世保)


1.母港艦船の動き
2.情報収集艦は引き続き減少
3.補助・補給艦は
4.戦闘艦の動き
5.高速輸送艦・揚陸補助艦
6.朝鮮国連軍参加国艦船
2024年 寄港艦船の一覧


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