5.高速輸送艦・揚陸補助艦

米海兵隊の新しい戦力計画(いわゆる「2030計画」)に合わせた艦船の建造が進められているが、佐世保ではまだ大きな変化は表れていない。海兵隊が主要な任務としていた強襲上陸から、移動能力の高い「海兵沿海域連隊(MLR)」(待ち伏せ部隊)に転換しようとするものだが、新しい戦力デザインにあわせた艦船の実験的段階のようだ。大きな転換点は輸送手段が揚陸艦のダウンサイジングと高速輸送艦や揚陸補助艦の取得と思われる。

米海軍の将来艦隊計画(FYSBP)で見ると、ESD(Expeditionary Transfer Dock 約78,000トン)や発展型のESB(Expeditionary Sea Base 約90,000トン)といった新しい種類の揚陸補助艦を運用し、これまで揚陸艦を使った貨物や車両の揚陸から、洋上あるいは受け入れ支援国の港湾を使った輸送・揚陸手段を追加している。

この方式を支えるため新たな種類の艦船の開発と配備が進められている。全面的な変更ではないようだが、ESDやESBは洋上や岸壁などで揚陸艦に直接、LCACや戦闘車両を積み替えるシステムを持っている。また、同時に予算削減のため実際の運航をMARSK海運など民間会社に委託する流れが定着している。

― 新型揚陸補助艦 ―
24年には北マリアナ連邦(サイパン)に拠点を置いているミゲル・キースが5回、ジョン・キャンレイが1回寄港した。最初に就役したモンフォード・ポイント(ESD)が横浜や横須賀、佐世保に寄港していたが、21年以降は改良型の揚陸補助艦(ESB)の配備が進められている。

現在、ESBは4隻が就役しているがそのうちの1隻ミゲル・キースが佐世保、沖縄、岩国相次いで寄港した。沖縄に駐留している海兵隊の一部がグアムに移転しているが、これらの再編計画と関連した動きだろう。
*2月1日現在、ミゲル・キースは三菱重工横浜工場で修理中

もう一つが、MEU(海兵隊遠征ユニット)の連隊規模の1個上陸戦闘部隊(MAGTF 海兵空地任務部隊)を車両や装備とともに高速長距離輸送できる輸送艦(EPF Expeditionary Fast Transport およびHST High Speed Transport)の配備で、EPFは現在までに12隻が配備され、将来は14隻体制での運用が進められ、HSTは民間の高速フェリーを取得・改造して運用している。
(入港艦船の種類と艦船名は別表[寄港艦船の名称]のとおり)

(入港艦船の種類と艦船名は別表「2024年 寄港艦船の一覧」のとおり)

(RIMPEACE編集委員・佐世保)


米海軍佐世保基地の動き=2024年= はじめに
1.母港艦船の動き
2.情報収集艦は引き続き減少
3.補助・補給艦は
4.戦闘艦の動き
6.朝鮮国連軍参加国艦船
2024年 寄港艦船の一覧


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