米軍公式文書が語る、艦載機の訓練空域の実態

1994年10月14日に、厚木基地の艦載機A6イントルーダーが高知県北部の早明浦ダム湖に墜落した。低空飛行ルートのオレンジルートをたどり、岩国基地に向かう途中で起こした事故だった。
この事故報告書からいくつかの低空飛行ルートの存在が明らかになっている。(95.10.19 高知新聞記事 米軍機の低空飛行、全国に訓練ルート 新たに4本判明)

この事故報告書の添付資料に、事故当日の厚木の艦載機の飛行計画書があった。94年10月14日のフライトスケジュールで、編隊ごとのコールサイン、離陸・着陸予定時刻、飛行ルート、訓練空域などが記されている。
この日の飛行予定の艦載機の機数は全部で47機。使用する訓練空域で一番多かったのが27機が向かったR599だった。それに次いでR116が11機、低空飛行ルートが5機、厚木基地周辺のローカルフライトが4機だった。
空域が広いから、利用する艦載機も多いのは当然で、この割合が年間の平均値だとすれば艦載機の飛行の半分以上が、存在がオープンにされていないR599に飛んでいることになる。

また、この飛行計画書には、前もってよく使用する訓練空域の利用可能な時間が記されている。ここに挙げられているのが、R116とR599、そして渋川上空のR589(自衛隊の使用空域)の3箇所だ。そして我々が毎年調査をしている厚木基地の艦載機の動きでも、この3つの訓練空域に行く機数が7割を超える。その中でも最も利用が激しいR599空域の存在がオープンになっていないのは何を意味するのだろうか。

「すべての米海軍及び米海兵隊航空機の十分な即応性の水準の維持を確保するための訓練空域の確保」という中間報告のテーブルの外で、日米両政府間の「密約」としてR599空域を米軍が保持し使用し続けることになる。自衛隊の空域でさえないこの空域は、米軍がどんな機関とも調整をせずに自由に使用できる。しかも厚木基地からは近い。こんな米軍にとって都合のいい空域があれば、米軍はここでの訓練を引き続き積極的に行うだろうし、そのためには厚木をその発進基地として使い続ける。
「艦載機の移駐」は名目だけのものとなり、厚木の爆音と危険性は不変ということになりかねない。

(岡本聖哉・大和市議、金子ときお・相模原市議、編集部)


マヤカシの艦載機移駐は許さない 目 次
1.はじめに(このページ)

2.移駐後、訓練空域はどうなる?

3.艦載機の格納庫・駐機場区域はどうなる?

4.最悪のシナリオを避けるために


マヤカシの艦載機移駐は許さない 秘密空域の存在
米軍公式文書が語る、艦載機の訓練空域の実態(このページ)

資料1. 日本周辺の訓練空域

資料2. 訓練空域設定関連の国会審議と、米軍空域設定の「根拠」

資料3. 事故当日の厚木の艦載機の飛行計画書


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