米海軍佐世保基地の動き=2023年= はじめに


朝鮮半島や台湾をめぐる危機が喧伝され、自衛隊の南西諸島配備が強行された一年だったが、米海軍では佐世保基地配備艦を除けば駆逐艦など洋上戦闘艦と原潜の入港隻数に大きな変化はなかった。

作戦艦の総隻数が減少したのは、佐世保基地に配備されていたドック型揚陸艦アシュランドが3月、米本国カリフォルニア州サンディエゴ海軍基地に配備変更されたことによる影響と思われる。また、洋上補給艦など補助・補給艦船の寄港が減少したため、入港総隻数も減少した。

なお、米海軍全体としてもドック型揚陸艦(LSD)の退役が進められているが(艦番号41,43)以外は当面現状のまま就役するようだ。同様に退役が進んだアベンジャー級掃海艦(MCM)は就役した14隻のうち残っているのは佐世保に4隻、バーレーン・マナマに4隻だけとなっているが、当初、掃海艦に代わって任務に就くことが計画されていた沿海域戦闘艦(LCS)は能力などの問題から配備が進まず、こちらも現状を維持するようだ。沿海域戦闘艦に代わり新型のコンステレーション級フリゲート艦(FFG)の建造が進められている。

米海軍の艦隊編成と建造計画(Navy Force Structure and Shipbuilding Plans)によれば、艦船の355隻体制は目標として維持されるが、今後は無人化及び艦船の小型化が進められる見通が明らかにされている。将来、佐世保配備艦船の編成が変わることも想定される。

また、在日米海軍の艦船修理やメンテナンスを担当する部隊(SRF JRMC)が佐世保でも充実してきており、要員のためと思われる住宅建設が基地周辺の地域で目立ってきている。 SRFの充実が進められる中、概ね5年ごとに行われる揚陸艦ラシュモアの定期修理(DSRA)が、米軍が接収している第2ドックで8月から11月まで行われた。

揚陸艦隊の動き
西太平洋海域で大規模な二国間・多国間訓練がなかったことから、強襲揚陸艦(LHA)アメリカを旗艦とする揚陸艦隊(PHIBRON‐11)の大きな動きはなかった。

アメリカは1月初旬から「スプリング・パトロール」に出港した後、沖縄周辺海域(フィリピン海)で海兵隊との訓練を終えた後、大阪南港に寄港した。

6月下旬からはアメリカ、ニューオルリンズ、グリーンベイも加わって、オーストラリアを舞台にしたタリスマン・セーバー訓練に参加したが、その前には海兵隊との揚陸統合訓練(AIT)と特殊作戦能力証明訓練(CERTEX)を周辺海域で行っていた。

9月には朝鮮戦争の転換点となったインチョン上陸作戦(1950年9月15日)を記念して行われるセレモニーにアメリカが参加した。

アメリカは11月29日に屋久島近海で起きた新型輸送機オスプレイの墜落事故となった現場海域に12月8日から13日まで展開していたところから、捜索・救助活動に当たるヘリコプターのプラット・フォームとして出かけていた可能性がある。

(母港艦船の動きは別表佐世保母港艦船の動き参照)

入港隻数は新型肺炎拡大前の水準へ
配備艦船を除く艦船の入港回数では、佐世保に2023年に入港した米海軍艦船は延べ140隻(22年137隻 21年110回、20年130回、19年の157回、18年144回)で、新型肺炎が拡大する前の水準に戻ったようだ。

5月には原子力空母ニミッツが寄港したが、随伴して寄港したのは駆逐艦1隻だけだった。ニミッツは佐世保入港直前の4月24日にはタイ、レーム・チャンバンや観光地パタヤで過ごしていたが、出港後の5月30日には台風災害支援(HA/DR)のためグアムに寄港し、その後ハワイ経由で母港のワシントン州ブレマートンに戻った。

駆逐艦の寄港回数はSRF拡充の前(18年延べ9回、20年延べ9回)と比較すると増加(延べ19回)しているが、周辺情勢によるものか、米海軍艦船のメンテナンスや修理を受け持つ艦船修理廠(SRF JRMC)の体制強化が影響しているのかは明確でない。
ちなみに、Naval Sea Systems CommandのHPでは日本で働く米国籍の従業者を募集している。

原子力潜水艦は3隻が5回寄港した。18年の15回、19年の14回、20年の1隻2回から大きく減少し、21年は0隻、22年は1隻1回となっていたが、再び増加するのかもしれない。
なお、日本国内では横須賀に5隻が10回、沖縄・ホワイトビーチに11隻が20回寄港した。

音響測定艦、測量(海洋調査)艦といった情報収集艦は、情報収集艦の拠点が横浜港やフィリピン・スービック、グアムなどに移った結果、測量艦1隻が1回、音響測定艦が1隻1回だけ寄港した。弾道ミサイル観測艦は1隻が2回寄港した。


(RIMPEACE編集委員・佐世保)


佐世保母港艦船の動き
情報収集艦は減少 測量艦の寄港は1回だけ
洋上補給艦 再び増加へ
戦闘艦の動き
高速輸送艦・揚陸補助艦
引き続く朝鮮国連軍艦船の寄港
2023年 寄港艦船の一覧


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